In Side The Gate:CHRONICLE15

27. オラトリオ・タングラム

リリン・プラジナーは、自らが開発に関与したタングラムの使用権を一般に開放し、その入手については、VRによる限定戦争の勝者たることを求めた。
そもそもタングラムは、未完成段階での無理な起動が祟り、完調には程遠い。その際の混乱がムーンゲート覚醒の一因ともなり、またOMGは、その事実を隠蔽する一面を持っていた。曰くつきのタングラムは、しかしそれを手中にすれば、無限ともいえる並行世界に関与して自らの運命さえも支配できるという。
かつて、アンベルⅣは以下のように発言した。
「無限の並行宇宙において、タングラムのみが1つの結節点として唯一無二の存在である。彼(彼女)は、運命を紡ぎ出す。彼女(彼)を得る者は、その運命を手中にする者であり、それは世界を手中にする者である」
それは、タングラムを巡る当時の人々の思いを代弁していた。
やがてVCa4年末、地球圏全域を巻きこむ一大戦役、オラトリオ・タングラムが開闢する。
期間は無期限、戦域は地球圏内無制限、勝者に与えられるのはタングラムによる運命編集権。
その規模は、従来の限定戦争とは次元の異なる巨大なもので、連日、各所で激しい戦闘が繰り広げられた。限定戦争市場は、未だかつてない活況を呈し、またこれは、OT産業にとってもエポックとなる出来事だった。VC90年代以降の紆余曲折を経て、ついにVRは確たる地位を得たのである。OTの落とし子は、戦闘エンターテインメントの枢要を担うツールとして、以後、血塗られた道をひた走る。

28. タングラムとの邂逅

オラトリオ・タングラムでは、通常の戦闘が大規模な軍団レベルで進行する一方、特に優秀なVRパイロットについては、タングラムへのアクセス権が優先的に入手できる機会が設けられていた。
だが、勝ちえた権利を実際に行使してタングラムとの接触に成功した例は、現在に至るまで知られていない。そもそも、仮に成功したからといって、期待通りの展開になる保証はないのである。自律意思を持つタングラムが彼らを拒めば、その身を並行宇宙のいずれかに転送する可能性さえある。そうなれば、彼らの行方を追うことはおろか、存在を知る術もない。事象転送機能が持つ、残酷な一面だった。
結局のところ、人が自身の運命を意図的に制御することなど、かなわぬ夢なのかもしれない。しかし、オラトリオ・タングラムは盛況を博し、時空因果律制御機構という言葉は、いつしか独り歩きを始める。それは成功願望の象徴へと姿を変え、むしろその方が人々にとっては都合がよかった。タングラムは謎めき、やがてそれは伝説と化して魅了する。邂逅を求めてオラトリオ・タングラムへと参戦する者は引きもきらず、地球圏は終わりなき戦闘祝祭に酔いしれるのだった。


時空因果律制御機構タングラム(接触拒絶系睨眼モード)

29. 腐蝕する覇権

オラトリオ・タングラムは、限定戦争市場を席巻し、VRを中心にOT産業の発展を促した。
VC70年代のXMUプロジェクトを伏流に、VC84年のムーンゲート発見を契機とし、VCa0年のOMG、その後の端境期を経てVCa4年、ついにVRは広く認知され、戦場に確固たる地位を築いたのである。
対立していたFR-08とTSC、各々を統べるリリン・プラジナーとアンベルⅣは、その後、奇妙な共生関係を築いていく。オラトリオ・タングラムは、両者の妥協が生み出した産物だった。電脳暦始まって以来の大戦役は、商用VRの運用等、OT産業を担う諸勢力に投げ与えられた餌となり、稀有の成功をおさめる。巨万の富を得たFR-08は、名実共に地球圏の盟主となり、その栄華は永続するかのように思われた。
だが内実は、様相を異にする。256系統に分派するリフォー家の一族は、膨大な収益の配分を巡って内紛を繰り返し、度重なる権力闘争の果て、仲介と調整役を担うリリン・プラジナーの存在さえ疎むようになっていた。 地球圏最大の企業国家は豊饒に溺れ、しかしその背後では密かに、そして確実に、不穏の兆しが現れ、世界を軋ませていく。

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