In Side The Gate:CHRONICLE15

26. 幻像結晶拘束体ブラットス

かつてトリストラム・リフォーがロジスティックスV計画を立ち上げた際、TSCは率先して協力した。計画を実現するためには、ムーン・クリスタルとアース・クリスタル、双方の管理体制を確立しなければならない。特に後者については、VC9f年に起きたヤガランデの惨劇の再発防止が必須だった。管理を一任されたTSCは、幻像結晶拘束体ブラットスの構築に着手する。
ブラットスは、8つの人工クリスタルとVコンバータによって駆動する、巨大な構造物だった。これら16基のユニットが展開する力場でアース・クリスタルを拘束、危険な精神干渉作用を遮断し、ヤガランデの出現を抑えたのである。稼働には膨大なパワーが必要で、個々の人工クリスタルには、機能強化のため、バーチャロン・ポジティブの高い適性者が計8名、強制封入されていた。ところが、その8名の怨嗟が暴発してアース・クリスタルと連動、ブラットスを巨大な攻撃体へと変貌させてしまう。構造上、クリスタルの安置された場所から外に出ることはできなかったが、強大な火力は脅威だった。
TSCはこの失態を隠蔽するが、ブラットスが変質する危険については、事前に承知していた。承知していながらなぜ強行したかといえば、アース・クリスタルの拘束に、重層する意義を見出していたからである。表向きは、ロジスティックスV計画に沿ったVクリスタル管理体制の確立がある。だが実際にはもう1つ、タングラムの運用阻止への布石という面が大きかった。TSCは、FR-08がタングラムを専有することに危機感を抱いていたのである。
タングラムの起動には、遍在するVクリスタル群との交感連動が必要である。そこでTSCは、ブラットスによるアース・クリスタルの拘束を特異的に強化し、交感作用を遮断しようとした。だが誤算があった。怪物化したブラットスの維持には、想定以上のコストがかかったのである。その攻撃性ゆえ、人的、物的損失は日々増大し、関係者は悲鳴をあげた。
TSCとしては、可能な限り速やかにロジスティックスV計画を中止に追いこみ、ブラットスを解体して状況回復に努めたい。その一方で、FR-08のタングラム専有を阻止する方向では、影響力の維持を望んだ。彼らがアンベルIVと接触、打診したのは、その手腕による事態の打開を期待してのことである。オーバーロードは快諾し、VCa4年まで、公に姿を現すタイミングを窺っていた。

クレプスキュール戦役においてTSC/RNA陣営は敗北を喫したが、交渉の場に臨むアンベルIVは楽観的だった。彼は、対峙するプラジナーがタングラムに執着していることを知っていたし、ブラットスを利用すれば、有利な条件を引き出せると踏んでいたのである。
しかし、彼さえも知らない意外な事実があった。すでにタングラムは失われていたのである。ブラットスの交感遮断機能は不安定で、調整が困難だった。試運転の段階から、必要以上の強度で動作することが多々あり、結果としてアース・クリスタルの拘束は過剰になっていた。影響を受けて衰弱したタングラムは、CISへと漂流する。辛うじて接続が保たれたのは、FR-08と第9プラントにそれぞれ設置されている2つのターミナルだけだった。
ブラットスの能力をちらつかせながらタングラムの独占を非難し、使用権の共有を求めるアンベルIVに対して、彼の意図を見抜いていたリリン・プラジナーは、終始有利に交渉を進めた。彼女の最優先目標は、VRを用いる巨大な限定戦争市場を創出、利益を独占して、FR-08の覇権を確実にすることである。市場創出自体は、当初からTSC/RNA側が望んでいたことでもあり、ある意味、すでに両者の目指すところは等しい。問題はイニシアチブの所在だった。この点に関して、プラジナーには譲歩するつもりなど毛頭なかったが、そのかわり、タングラム使用権のオープン化を提案する。これを勝ち取りたいならば、FR-08と国際戦争公司が共催する限定戦争興行オラトリオ・タングラムに参戦し、規定のルートを介してCIS内のタングラムと接触せよ、と誘ったのである。
プラジナーの提案は歓迎された。敵味方を問わず、人々は自らの運命を操る誘惑に駆られ、思いを巡らし、結局は差し出された餌にとびついたのである。


幻像結晶拘束体ブラットス

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