In Side The Gate:CHRONICLE15

11. アンベルⅣ

ディフューズ・アルフレート・ド・アンベルⅣは、アンベル家14代目の若き当主である。わがままと気まぐれで社会を翻弄する、悪名高いオーバーロードの一員であり、また、一個人なのか巨大システムのアバターなのか判然としない存在でもあった。高慢かつ耽美的な言動が誤解や反発を招き、決して評判の良い人物ではなかったが、VC92年にはDN社最高幹部会に招じ入れられている。
やがてVプロジェクトの統括責任者に就任した彼は、懸案であった9大プラント設営の陣頭指揮を執り、VCa0年に予定されるVR販売開始に向けて精力的に活動した。
当時のDN社は、VRの商品化に注力していたわけだが、全社が一丸となっていたわけではない。ムーンゲートが発見された当時から、OTの利用方法については論争が絶えず、特に、ゲート・フィールドの転送機能を活用して太陽系内の流通革命を構想する一派と、VRの商品兵器化による限定戦争市場の寡占を目論む一派は、恒常的な対立関係にあった。彼らはやがて、利害の一致する者同士で派閥を作り、露骨に反目した。アンベルⅣはそのような状況を俯瞰し、自身の望む方向へ社を導くと同時に、一貫性に欠ける言動によって対立を煽り、混乱と喧騒を楽しんでいた節がある。
ところが、VC9f年も残すところあと10数時間、すなわちVプロジェクトの最終段階になって事件が起きた。アンベルⅣが、謎の詩文を辞表がわりに社を去ってしまったのである。しかもあろうことか、自身が設立した9つのプラントを、独断で売却していた。

12. ヤガランデの惨劇

Vプロジェクトは継続不能となり、DN社は窮地に立たされる。事態収拾への対応は場当たり的で、最優先課題だった9つのプラントの買い戻しもままならない。最高幹部会は焦燥し、やがて指示系統に致命的な混乱が生じた。その余波は速やかに末端組織へ広がる。特に、南米に拠点を持つ第4プラント奪回のため、DNAが独断で大規模な部隊を出動させた一件は、大きな問題に発展した。当初、順調に思われた彼らの行動は、先行部隊の連絡途絶によって暗転する。未知の敵、XBV-13-t11 バル・バス・バウとの遭遇戦に巻きこまれたのである。XBV-13-t11は、かつて脚光を浴び、また忘れ去られたBBBユニットを下半身に装着する、強力な戦闘VRだった。
一方、第4プラントの管内には大規模な古代遺跡群があり、内部に突入した部隊は、浮遊する巨大な八面結晶体を発見した。それがアース・クリスタルと呼ばれ、ムーンゲート内のものと同様、太陽系全域に遍在するVクリスタルの1つであるなど、現場の兵士は知る由もない。そして直後、部隊は壊滅する。
その後の調査で、壊滅の原因はVクリスタルの精神干渉作用によるものと結論づけられたが、生存者の証言には、奇妙な内容が混じっていた。彼らは、ヤガランデなる巨大なVR様の機体(おそらく幻影である)から、攻撃を受けたというのである。
後にヤガランデの惨劇とも呼ばれるこの事件は、また、かつてプラジナー博士が手がけた3柱のオリジナルVRのうちの1つ、実在が疑われていたアプリコット・ジャム(ガラヤカ)について、認識を新たにする機会ともなった。


祭られるアース・クリスタル 遺跡内部全景。南米に所在する第4プラント中枢部と思われる。ムーンゲート以外にこのような遺跡が存在していたことは、DN社最高幹部会も関知するところではなかった。VC96年に9つのプラントの設営エリアが指定された時、最初に決定したのはこの第4プラントである。そして推薦者はアンベルⅣであった。遺跡の実態について、彼が何らかの情報を持っていた可能性は高い。また封印されたVR-011及びヤガランデは、たびたび結界内に姿を現している(両機の姿形についてはP.061参照)。

13. ガラヤカの真実

ムーンゲート最深部でVクリスタル(ムーン・クリスタル)が発見されて以来、常に研究活動の最前線で活躍したプラジナー博士は、ある時期からオーバーロードのアンベルⅣと交流をもったといわれている。太陽系に遍在するVクリスタルのうち、アース・クリスタルが、南米古代遺跡深奥に祭られていることを知ったのも、その頃だった可能性が高い。
ムーン・クリスタルに先立って発見されていたにも関わらず、アース・クリスタルの存在は長らく秘匿されていた。なぜなら、この結晶体には極めて厄介な問題があったからである。俗に幻獣戦機ヤガランデと呼ばれる、異空間に封印された正体不明の破壊神が、古来よりアース・クリスタルを憑代として現界降臨する志向性を持っていたのだ。
人間の不用意な接触でバーチャロン現象が引き起こされるようになると、それまで休眠状態にあったムーン・クリスタルは徐々に覚醒の兆候を示し、またその影響を受けて、アース・クリスタルにも同様の現象が観測された。おそらく、ヤガランデを鎮める意図があって構築されたであろう古代遺跡内の結界は揺らぎ、放置すれば危険な臨界状態に達することは、容易に想像しえた。
アンベルⅣがDN社に立ち入るようになった理由の1つは、この点にあったと推測される。当初から彼は、Vクリスタル間の連鎖反応を引き起こすリスクを指摘し、BBBユニット復元計画を批判した。そしてOT事業の目指すべき代替案として、商品兵器「戦闘VR」の開発を提示、Vプロジェクトを推進する。またその一方で、彼はプラジナー博士に近づき、ヤガランデに関する危険を知らせたのである。
対策を請われた博士は、異界の強大な破壊衝動の中に、ある種の幼児性とでもいうべき特異な性癖があることを知る。彼は、これを誘導してVコンバータ内に蒸着、強引にリバース・コンバートしてVR化した。そして、この機体を中継してヤガランデを制御すべく、研究に没頭した。この結果生み出されたものこそ、VR-011アプリコット・ジャムと呼ばれる機体である。
アプリコット・ジャムは、その幼女を思わせる外見に反して、極めて危険なVRだった。人知を超える破壊衝動を伴う幼い心は、人の手に余る怪物、すなわち「ガラヤカ」だったのである。さらに、Vコンバータを介して封印したことが災いし、それまで抽象的な存在に留まっていたヤガランデさえもが、VR的装いの破壊神として具体的な姿を現し始めた。
プラジナー博士は、世界を破滅へと導きかねないVR-011を、南米遺跡の禁制領域結界内に改めて封印した。同時に、太陽系内に遍く散らばるVクリスタルの完全制御を目指し、時空因果律制御機構タングラムの造営をも計画した。
ところが、これら人類の命運を決する大事業の数々は、いずれも未完のまま中断されてしまう。直接的な要因はプラジナー博士の失踪にあるが、そこに至る詳細は、未だ明らかになっていない。
いずれにせよ、ガラヤカ、及びヤガランデへの対策は完璧なものではなかった。博士の失踪後のVC9a年、アンベルⅣがヤガランデ封印の補強作業を指示したとの話もあるし、また、VCa0年のOMG以降、南米遺跡の管理を一手に引き受けた第4プラント(後のTSCドランメン)は、アース・クリスタルの拘束体ブラットスを構築している。

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