In Side The Gate:CHRONICLE15

16. フレッシュ・リフォー台頭

OMGは成功裏に終わり、ムーンゲートは休眠状態に回帰した。
しかし、延命するかにみえたDN社は、災厄で綻んだ体制を繕うことに失敗する。もとより、ムーンゲート遺跡の発見以降、社内は常に揺れていた。遺跡そのものへの関与を懸念する声が根強くあったのはもちろんのこと、ゲート・フィールドの転送機能を利用して、通信、流通網にイノベーションを起こそうと画策する者、それを避けたい既得権の保持者、あるいは戦闘VRによる限定戦争市場への参入を企図する者……思惑や立場の違い、利害の一致、不一致は、日を追うごとに深刻となり、諸派は合従連衡を繰り返す。合議制を旨とする最高幹部会でも、対立は表面化していた。賛否の入り乱れる混迷を切り抜け、無数の批判を受け流してVプロジェクトを推進したアンベルⅣの失踪は、大きなダメージだった。彼を欠いたDN社、そして最高幹部会に、最早体制を維持する力はなく、VCa0年、地球圏最大規模を誇った企業国家は消滅する。

かつてVプロジェクトを担った9大プラントは、各々企業国家として独立した。彼らの名称と略号(カッコ内表記)は、以下の通りである。

・第1プラント ダンシング・アンダー (DU-01)
・第2プラント トランスヴァール (TV-02)
・第3プラント ムーニー・ヴァレー (MV-03)
・第4プラント TSCドランメン (TSC)
・第5プラント デッドリー・ダッドリー (DD-05)
・第6プラント サッチェル・マウス (SM-06)
・第7プラント リファレンス・ポイント (RP-07)
・第8プラント フレッシュ・リフォー (FR-08)
・第9プラント 固有名詞なし(略号なし)

※以降、プラント名は略号で表記

これら9つの企業国家は、ムーンゲートやVクリスタル由来のOT、及びそれを利用して開発されたコンテンツを有する、いわばOT業界の雄だった。DN社の頚木を脱した彼らは、さらなる飛躍を目指して互いに覇を競う。
いち早く頭角を現したのは、FR-08だった。彼らの根拠地は南極大陸にあり、代々リフォー家の人間が中核となって運営してきた。業務の中心は金融部門で、VC90年代にはDN社傘下にあって資産運用を一任され、莫大な富を手にしている。彼らは、DN社消滅後、その傘下だった企業群の再編に努め、1年あまりで巨大な経済的支配力を手中に収めた。
盟主トリストラム・リフォーは、OT産業の振興に力を入れたが、VR関連分野には否定的だった。DN社のもとにあった第8プラント時代、Vクリスタル由来のネットワーク・システムに可能性を見出し、0プラントへの投資にも熱心だった彼は、一方で、限定戦争市場には魅力を感じていなかったのである。
時代は変わり、主導権を得た今、リフォーは自身の意思を明確にする。VRつながりの諸事業は軒並み中止となり、関連部署や企業の多くは解散、ないしは売却の憂き目をみた。特に、ムーンゲートを管理するDU-01は、この流れのあおりをまともに食った。大規模な研究開発部門を有し、OT業界で常に存在感を示してきたこの巨大プラントは、しかし、政治力に乏しかった。FR-08体制に組みこまれると、抗う術もないまま、単なる遺跡の管理組織へと改編される。進行中だった研究開発プロジェクトのほとんどは中断し、人材は散っていった。
ただしリフォーは、VR事業の根絶を望んでいたわけではない。それはある種のバランス感覚だった。旧DN社の趨勢は、Vプロジェクト以降、限定戦争市場への本格参入に傾いていた。彼ら旧勢力の多くを取りこんで肥大化したFR-08にとって、その主張を全否定するのは得策ではない。そこで、たとえばVRの研究開発に関しては、MV-03に限ってこれを許可し、また運用組織であるDNAの存続を認めた。しかし、その過程における高圧的な姿勢に対しては常に批判や反発が生じ、様々な禍根を残した。

17. 白虹びゃっこう騎士団

トリストラム・リフォーがVRを疎んじたのは、シャドウによるところも大きい。確固たる対策が講じられず、放置されたがゆえに拡散していった憑依VRの存在は、OMG以前から脅威だった。すでに第8プラント時代、自前の第8艦隊「白檀」をシャドウ対策に運用していたリフォーは、FR-08体制に移行した後、これをさらに発展拡大させる形でホワイト・フリート(白檀艦隊)を創設する。事実上、地球圏最強の軍事組織となったこの艦隊は、シャドウ憑依VRの駆逐を専門とする実戦部隊、白虹びゃっこう騎士団を擁していた。騎士団には、常に最新鋭の装備と最優秀の精鋭、高額の予算が注ぎこまれ、特にVRパイロットについては、選りすぐりの精鋭が集められた。彼らの技量は、限定戦争で戦闘業務に従事するDNAのパイロットなどとは比べるべくもない、超人的なレベルに達していた。
騎士団筆頭は、数々の戦歴から生ける伝説となったレオニード・マシン卿。そして、全体を統括する団長職は、プラジナー博士の忘れ形見にして、天才少女の呼び声も高いリリン・プラジナーが務めた。当時、第9プラントに軟禁されていた彼女がこのような要職に据えられたのは、シャドウを狩り出す際にファイユーヴとの連携を重視する、リフォーの意思が反映された結果である。少女とオリジナルVRは、プラジナー博士を父とする、ある種の姉妹のような関係にあった。実際には、期待されたほど緊密な共闘体制が生まれたわけではなかったが、それでも両者の間には特殊なホットラインが築かれ、一定の情報共有が継続した。また、マシン卿は少女の能力を率直に認めて立場を尊重したため、騎士団全体の結束も高まり、組織運営は円滑だった。
しかし、彼らの恵まれた待遇と、任務の特殊性から生じる隠密行動の多さは、それを妬み、あるいは疎む者を生み出す要因ともなった。トリストラム・リフォーはVR無用論を唱えながら、自らの私兵には最新鋭の機材をあてがっている。建前だけでは正当性を説明しえない、矛盾した状況だった。

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